なんとなく地味な感じで敬遠していたクネル。食都リヨンの一皿ということで、この度挑戦してみたが、これがなんとも旨い。本邦のはんぺんとつみれの間のような優しい食感と濃厚なソースがマッチしております。メール Mere 言われる女性料理人(「ブッションの先駆者 レ・メールの事」)が開いたブションと呼ばれる気のおけない郷土料理店から始まった一皿だそうだ。
海がないリヨンでは、伝統的にはカワマスのすり身とナンチュールソース呼ばれるザリガニの殻から作るソースを組み合わせるそうだが、チキテオは鯛と甘えびのすり身と甘えびの殻から取ったソースで試みた。北市貴子さんのレシピを参考に。
甘えびは身を外し、頭と殻は別に取っておく。甘えびとタイの身を包丁で叩いてすり身にする。ボウルに入れ卵白、ナツメグ、塩を加え練る。ラップをして冷蔵庫でしばらく寝かす。楕円形に整形し、70°のお湯に落して浮いてきたらキッチンペーパーにとる。ソースを作る。フライパンにバターを入れ、甘えびの頭と殻、小麦粉を加え炒める。白ワイン、トマトのみじん切り、ローリエを加えしばらく煮る。ざるに取っれ木べらでつぶすように漉す。再び火にかけ、塩、胡椒、生クリームを加え煮詰める。耐熱皿にクネルを並べソースをかけ230°のオーブンで15分焼く、ライスを添えてどうぞ。
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夏の間、凝っていた茄子とトマトを使ったシチリアのパスタ。この場合、やっぱり南イタリアはカンパーニャ州の極太パスタのパッケリ paccheri を使うね。このパッケリがなかなか売っていないのが最大の悩みではある。トマト味とはいえ、いわゆるソースっぽい感じではなく、調味料的に控え目にトマトソースを使うのがコツ。しっかりと塩茹でしたパッケリ、揚げた茄子、チーズ(塩漬けリコッタを使うのが本場)、フレッシュバジルなど、それぞれの素朴な素材が控え目なトマト味に絡められた優しい味わいが、暑気が漂う夏の夕暮れにふさわしい。ノルマとは、かの地出身のベッリーニにオペラ曲名に由来するとか。
茄子は割と小さく切って塩をしてしばらくおく。茄子から出た水分をペーパータオルで拭ってオリーブオイルで揚げる。トマト缶を煮詰めてソースをつくる。しっかりと塩を入れたお湯(1~2%)でパッケリを茹でる。フライパンにニンニクを入れ、オリーブオイルを注ぎ加熱、トマトソース、茄子、パッケリを加えて絡め、塩、オリーブオイルで味を調え、皿に盛り、リコッタ・サラータを削ってかけまわし、フレッシュバジルを載せる。
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稚鮎がスーパーに出回る季節となりました。さっそく入手して天ぷらにしてみました。軽い揚げ上がりとそこはかとない苦みが、よく冷えた白と相性抜群。どんよりした梅雨の時期、またとない爽やかな印象の一皿といえます。
シンプルなアユ料理の場合、その特徴でもある胸びれ、背びれ、腹びれ、尻びれ、脂びれ、尾びれなど、さまざまなひれ(鰭)を立たせて仕上がるのが、腕の見せどころなのだそうです。
稚アユを軽く洗い、優しく水気を拭き取って、小麦粉をまぶす。刷毛を使ってまぶすとプロ並みだ。さまざまなひれの部分にも丁寧にまぶし、指ではさんでひれをなるべく立った状態にしておくことが第一のコツ。衣にくぐらせ、油で揚げるが、第二のコツは、アユを油に投入する際に、しっぽをもって胸びれを下にしてを頭の方から斜めに油に入れ、その後、しっぽを放さずに素早く頭とは逆方向に2~3回、油の中を泳がせるようにし、胸びれがやや固まった状態になった後に、手を放して全体を油のなかに沈めるようにすること。
やってみましたが、浅いフライパンで揚げ油をセーブしながら揚げるという家庭環境では、浅い油油のなかでアユがどうしても横になってしまい、片方のヒレが身の方に倒れ掛かって固まってしまうなど、理想的にはいかないようです。それでも写真で見るように、胸びれがやや立った仕上がりになているのがるわかると思います。
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しみじみと塊牛肉の旨さを堪能できる一皿。
ブリスケット(ブリスケ)Brisketと呼ばれる牛肩バラ肉のブロックを長時間かけて炭火で燻製焼きにすることによって、この固い部位を驚くほど柔らかく旨味を留めた一皿へと仕立てるテキサススタイルのBBQ。ジョン・ファヴロー監督・主演の快作映画『シエフ 三ツ星フードトラック始めました』にも登場したアーロン・フランクリンのお店では、合計12時間をかけてじっくりと火入れをすることになっております。なっておりますが、ここ都会のキッチンでは、それは到底無理なので諦めていたところ、オーブンを使ってこんな風にすればよいというレシピが、いつもお世話になっているNAGIさんのサイトにありました。
以下の分量はブリスケ2kg見当の目安です。ブラウンシュガー1tbsp、パプリカパウダー2tbsp、オニオンパウダー1tbsp、ガーリックパウダー1tbsp、クミンパウダー1tbsp、マスタードパウダー1tbsp、ブラックペパー1tbsp 、塩1tbspを混ぜ合わせ、ブリスケに擦りあわせて冷蔵庫でしばらく~1日寝かす。
ニンニクのスライス(2個分)、シードルヴィネガー1/2カップ、ケチャップ1+1/2カップ、ブラウンシュガー1/2cup、ブラックペペー2tbsp、オニオンパウダー1tbbs、カイエンヌペパー1tbbs、ウースターソース1tbspを鍋に入れ、冷蔵庫から取り出した肉に絡ませ、160度に予熱したオーブンで約4~5時間加熱する。1時間ごとに肉にソースを絡める。最後の30分は蓋を取る。肉を一旦取り出して、肉にソースを絡ませ、200℃に温度を上げたオーブンで肉の表面がキャラメリゼ状態になるまで焼く。ブリスケを薄切りにして煮詰めたソースを添える。
アーロン・フランクリン流で、まぶすのは塩・胡椒だけ、あるいはエスプレッソを加えたソースなど、これからいろいろ試してみたくなるね。
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ハムカツという名の昭和。使うハムは、ぜひ、豊かになる前の日本の記憶が舌に蘇る、薄切りのプレスハムで。
くず肉をつなぎで固めて作られるプレスハム。1970年ぐらいまでは、ハムといえば、この四角い、赤い、プレスハムが主流でした。マトン、馬肉、豚肉などのさまざまな雑肉とでんぷんの風味がなんとも懐かしい。すっかり上品さを装うようになった最近のスーパ―などではとんと見かけないので、入手するのは街の肉屋だ。今回のプレスハムは石川台の希望が丘商店街(実に昭和な名前ですね)の「アンデス東雪谷店」さんで買いました。
薄切りのプレスハムに小麦粉をつけて溶き卵をくくらせパン粉をつけて揚げる。千切りキャベツを添える。
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初夏を迎えるこの時期にはぜひ生の竹の子を茹でて。竹の子は若竹煮のようなあっさり仕立ても旨いし、こんなシンプルな油炒め旨い。炒めたねぎの香味がタケノコと実によくマッチしております。
竹の子をぬかと茹でる。自然に冷まして皮を剥き適宜カットする。豚バラを一口大に切ってボウルに入れ、塩をもみ込んでおく。長ネギは5cm長さにカットして半割に。フライパンにごま油を注ぎ、しょうがの千切り、赤唐辛子を入れ強火にかける。豚バラを入れ炒め、続いて竹の子、長ネギを加え、炒め合わせる。酒を振って塩・胡椒で味つける。好みで醤油を加えても可。
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名残を惜しむようなそこはかとない桜色。これからの泡の季節にふさわしい一皿です。刺身とフルーツの愛称は抜群、仲を取り持つのは塩とオリーブオイルです。ペルーのセヴィーチェにも似た取り合わせの一皿はワタナベマキさんのレシピです。
鯛のサクを薄めの削ぎ切りにしてボウルに入れる。グレープフルーツの皮を剥き、ボウルの上で房から果肉を取り出し手でちぎって加える。こぼれるジュースもしっかりボウルで受けてマリネに使う。粗みじん切りにした紫タマネギ(春先は新タマネギがいいね)と香菜を加え、塩、ブラックペパー、オリーブオイルで味を整えて、全体を和える。
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その面構えから深海に住まわれていることがわかる金真鯛。脂の乗ったとろっとした食感の柔らかい白身が特徴です。静岡や千葉など近海で採れるので関東ではお馴染みの魚。お馴染みですが、丸ものの金目鯛はいささか高いというのが現実。したがって食卓においては必ずし金目鯛はお馴染みではないわけです。そんなかでアラは安いぜ、お買い得ということで、今回は金真鯛の頭をトルコ風の紙包み焼きに。ぶどうの葉を入れ、白ワインの代わりにトルコの干しブドウから作られた蒸留酒ラクを使うとより本格的だ。サラーム海上さんのレシピを参考に。
金真鯛の半割の頭を軽く流水で洗い、水気を拭いて塩・胡椒をする。広げたオーブンシートの片側に金目鯛の頭を置き、薄切りのタマネギ、4分の1にカットしたミニトマト、小口切りの青唐辛子、小口切りのわけぎ、オリーブ、ケイパーなどを乗せ、さらにバター、塩レモン(今回は塩柚子)を乗せ、白ワインを注ぎ、シートをかぶせて包み込む。220℃に予熱したオーブンで30分焼く。
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旬が終わる前に定番のいちごを使ったソースでチキンソテーを食べます。「菊乃井」三代目主人の村田吉弘さんのレシピを参考に。
いちごを細かく切ってフライパンに入れ火にかけに煮詰める。オリーブオイルを加え乳化させ、塩・胡椒で味を整える。甘い感じが好みの場合は少し砂糖を加える。ヨーグルトを加えさっぱり感を付与してもよいね。鶏もも肉は重さの0.8%ぐらいの塩をする。フライパンにオリーブオイルを注ぎ火にかけ、皮目を下に鶏を入れる。蓋をして中火で5分。途中で蓋を開け焼け具合を確かめ、その後弱火にし蓋をしてさらに5分。トータル0分、皮目からだけ焼いて、皮目はパリパリ、身はジューシーなチキンソテーの出来上がりです。このやり方は「マルディグラ」の和知徹さんのやり方です。フライパンの脂を捨て、水を加え木べらでフライパンにこびりついた肉の旨味をこそげ落し、肉から出た肉汁も加え、半量に煮詰めてソースにする。鶏にソースをかけスナップエンドウを添えてどうぞ。
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生でよし、焼いてよし、揚げてよし。新タマネギ第2弾は、甘さとちょっと焦げたところの香ばしさが際立つ新タマネギのかき揚げを。だしを手づくりすると、この手のシンプルなそうめんやうどんは数倍旨いね。チキテオは関西風で。
つゆを作る。以下は4人前の分量。鍋に水1700cc(蒸発する分を考慮して出来上がりのつゆで一人400cc見当)を張り、昆布2~3本、煮干一掴みを加え一晩置く。鍋を極弱火にかけ沸騰するまでゆっくり煮出す。昆布から泡がたったら引き上げ、厚削り節一掴みを加え、沸騰させないように煮出す。火を止めて落ち着くまでしばらく待って漉す。漉したつゆに、みりん、薄口醤油を加え、再度沸騰手前まで加熱する。
新タマネギは厚さ1cmに輪切りにして水に溶いた天ぷら粉と混ぜ合わせて表面がキツネ色になるまで揚げる。あとはそうめんやうどんを茹でて、丼に盛ってネギを散らすだけ。丼を温めておくことを忘れずに。ちなみに、だしをとった昆布は、食べ易い大きさに切って水、醤油、みりんを加え煮詰めてつくだ煮にすると、これまたご飯のお供に良い。
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新タマネギが出まわるこの季節に無性に食べたくなる一皿。チキテオにおいては、もはや主役はタマネギではというぐらいに、大ぶりに切った大量のタマネギを乗せていただきます。新タマネギのみずみずしさ、シャキシャキの歯ごたえ、微かな辛み、オリーブオイルの香りに病みつき必至です。パリのごく普通のビストロにある、ごく普通の料理。気取った店では食べられないね。
酢漬けニシンはロシア産のものを玉川田園調布の「パテ屋」さんで買ってきました。1973年開業の元祖洋風総菜屋の「パテ屋」さんもすでに50年という老舗です。
じゃがいもを茹でて皮をむき適宜カット。ニシンの酢漬けを食べたいだけ切る。新タマネギを大きめにカットする。皿にのせて塩・胡椒、オリーブオイルをたっぷりかけまわす。ちぎったイタリアンパセリを乗せる。
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春告パスタ。
vol.605でハタハタの餌で登場した春を告げるホタルイカ。こちらも春レシピ定番の菜の花と組み合わせてパスタソースにしました。シンプルなアーリオ・オーリオ仕立ても良いですが、今回はホタルイカを粗みじんに刻んで、ワタも含めホタルイカの旨味全部ををスパゲッティーに絡めます。
鍋に湯を沸かし塩を加え、パスタを茹でる前に菜の花を軽く茹でておく。フライパンにオリーブオイルを注ぎ、ニンニクのみじん切り、赤唐辛子を加え火にかけ、目を取って粗みじんに刻んだホタルイカを加え、白ワインを注ぎアルコール分を飛ばし、トマトソースを控え目に加え、塩・胡椒で味を整える。茹でたスパゲッティを加え、菜の花、茹で汁、オリーブオイルを加え全体を和える。ちぎったイタリアンパセリを乗せる。
《ホタルイカのタブレ》vol.166、《ホタルイカのアヒージョ》vol.244 などもお試しください。
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秋田や庄内では子持ちのハタハタ(鰰)が日本海の冬の名物ですが、山陰地方ではシロハタと呼ばれる子持ちではないハタハタが春にかけて旬を迎えます。同じく春が旬のホタルイカを餌として育った、この時期のハタハタは脂がのって、これまたなかなかです。
雷鳴がとどろく海の荒れた時によく獲れることからら、鱩とも記され、別名カミナリウオとも呼ばれているそうです。淡く光った子ぶりな姿や淡白な白身の味わいから受ける印象とは逆でハタハタは深海魚です。確かによく見ると不敵な面構えをしてるね。
ハタハタに軽く塩をして一夜干しを作る。こちらの方が身が締まり旨味も濃くなる。骨離れの良い白身はアヒージョにしたら旨かろうということで、フライパンにオリーブオイルを注ぎ、じゃがいもを加え蓋をして弱火で柔らかくなるまで火を入れる。ハタハタを加え、最後にセリを加える、セリは当然、根っこも。最後にシェリーを加えるとワインに合うおとなの味になるね。
もちろん一夜干しをそのまま焼いても旨いね。
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たこの柔らか煮は、その煮上がった色から桜煮と称されます。こういったところにも季節感を重ね合わずにはすまない、なんとも絶妙な日本風の命名ではありませんか。
桜咲く3月、今が旬の飯蛸を仕入れて、桜煮ならぬ、桜グリルを作ってみました。色は桜っぽくないですが、そこは気分、気分。ソースはサルモリッリオと呼ばれるレモンとオレガノとニンニクを使ったシチリアのさわやか系ソースを添えて。
チキテオではvol.381で《イイダコのルチア風》 Polpo muschiato alla Lucianaを作りましたが、このPolpo muschiatoという言い方は、地中海固有の「じゃ香ダコ」(英語ではmusky octopus)という薫り高いタコを指す言葉であり、これがMoscardinoの語源ともなったのだそうです(Osteria dello scudo さんのサイトより)。Webサイト<オステリア・アベベーノ>さんのレシピを参考に。
イイダコの頭の指を入れてワタを取り出して、クシバシを取り除き、流水で洗う。ボウルにレモンを搾って塩を加えて、摺り下ろしたニンニク、プレッツェーモロ(イタリアンパセリ)のみじん切り、オレガノ、オリーブオイルを加えて乳化させる。焼き網をよく熱してイイダコを足を下にしてイイダコを乗せて焼く。焼けたイイダコを皿に移しサルモリッリオをまわす。
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今回はポン・ジュノ監督のアカデミー賞受賞作『パラサイト 半地下の家族』に登場する一皿。「チャパグリ」は韓国のインスタントラーメンの「チャパゲッティ」と「ノグリ」を一緒につくることから、そう呼ばれているのだそうです。映画のなかでは、それを所望する、高台の豪邸に住む若奥様はジャージャー麵と呼んでいました。
このチャパグリ、もともと軍隊メシが始まりだったらしい(詳しくはこちら)。とっさに浅間山荘事件における日清カップヌードルを思い出しました。
つくり方はいたって簡単。2つのインスタントラーメンを韓国食材店などで入手して、一緒に茹でてソースなどを絡めるだけ。映画で登場するのは、厚切り牛肉が入った豪華バージョンでしたが、チキテオはソーセージとターサイ(搨菜)を加えた、どちらかとういうと坂下庶民向け&ヘルシーバージョンで。近くの韓国食材店「済州食品」のおばちゃん曰く、「本来は、なんにも入れないの。十分、旨いわよ」
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女正月って知ってます?
暮れの大掃除に始まって、年末から大みそかにかけてのおせち作り、年始には親戚の来訪や年賀客の接待など、多忙と気遣いが続く、家制度のもとの女性、主に一家の主婦、のそうした重労働と気苦労がひと段落する松の内があけた1月15日がそう呼ばれているのだそうです。
小正月とも呼ばれる女正月といえば、向田邦子脚本のテレビドラマ『阿修羅のごとく』に登場する、竹沢家の女たちが作る揚げ餅。すっかりひび割れて、いい具合に乾いたお供えの鏡餅を小さく切って、加藤治子、八千草薫、いしだあゆみ、風吹ジュンの四姉妹が、ひび割れた鏡餅が亡き母大路三千緒のあかぎれのかかとを思わせるとかなんとか、かしましく言いあいながら、実家の台所で揚げ餅を作るシーンが思い起こされます。
家制度による女性の桎梏も、大家族のにぎやかさも、年賀客のおめでたい酔態も、すっかり姿を消してしまった昨今の正月ですが、カビの生えかかった鏡餅の再利用の格好の機会として、遅ればせながら女正月などと嘯きながら、揚げ餅を作ってみた。旨いで。
乾燥した鏡餅をひと口大に切って油で揚げる。油をきって皿にのせ塩を振る。ブラックペパーなども合う。醤油、シナモン、はちみつなどでもよい。
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ポルタフォッリオportafoglioとは「さいふ」という意味だそうです。「さいふ」のなかに、モッツァレッラ、オリーブ、オレガノ、ケイパー、ナッツ、生ハムなど、いろいろと試して詰めるのが楽しい一皿。香菜、ニン二ク、クミン、アリッサなどを詰めてた中東風もいけるかも。
カジキマグロをラップで挟み、延べ棒などでたたいて5ミリほどの厚さに延ばす。塩・胡椒をして、片側に手でちぎったバジル、イタリアンパセリのみじん切り、摺り下ろしたパルミジャーノ・レッジャーノを乗せて、2つ折りする。小麦粉、溶き卵、パン粉をつけ、オリーブオイルで揚げ焼きにする。
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一に皮、二に皮、三、四がなくて五に皮、と断言したくなる優れモノの餃子の皮は、創業43年の関屋城南食品さん@西小山のもの。26枚入りで180円也という破格の値段というのも特筆。
もちっとした食感、粉をしっかり練ったもの特有の弾力ある歯ごたえ、焼いてもへたらない充実度など、これぞ餃子、これこそ餃子、というべき圧倒的な皮の存在感に目を見張りました。もうほかの皮で餃子を作る気はまったく失せました。
下記でリンクを貼った品川区中小企業支援サイトの同社のページには「一番生地のみを使用。加水率が高いので皮がよくのびる」とあります。「一番生地」とはなに?今度聞いてみましょう。
関屋城南食品さんは肝臓公司さんのサイトで知りました。熟成麺や多加水麺など麵も旨いとのことで、あわせて中華そば5玉350円也も購入しました。
ボウルに豚ひき肉、ショウガとニンニクの摺り下ろしを入れ、白くなるまでよく練り込む。みじん切りの白菜とニラを加え、紹興酒、塩、胡椒、砂糖(少々)で味をつける。
関屋城南食品さんの餃子の皮にタネを包んで、片栗粉を振ったバットに並べる。フライパンに油を注ぎ、餃子を並べ火にかける。餃子の1/4程度の高さぐらいに水を注ぎ、蓋をして強火にかける。水分がなくなったら、弱火にし、餃子に上からごま油をそそぐ。餃子は下が焼かれて固くなりまでは動かさない。下が固くなったころ合いを見計らた、餃子とフライパンに間にフライ返しを差し込んで、その間に油を入れるようにする。絶対に無理をして餃子をフライパンからはがさないこと。餃子がフライパンに張り付いた状態の場合は、少しづつ、少しづつ、フライ返しを餃子の下に差し込む感じで、餃子を浮かすようにフライパンからはがす。餃子の上が透明な感じになり、下がきつね色に焼けたら完成。ぜひ《手作りラー油》vol.421と一緒にどうぞ。
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■株式会社関屋城南食品 東京都品川区荏原5-11-18
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直訳すると頭のチーズ。本邦でいうと豚の煮凝りだ。なんでフロマージュって言うのか調べてみた。
以下、サイト「たべもの語源あれこれ」による「フロマージュ」の意味するところ。
チーズの起源は起元前8000年頃、西アジアで羊や山羊を家畜化した頃からといわれている。チーズはその後、ギリシャから古代ローマに伝わって「カーセウス・フォルマティクス」と呼ばれた。「カーセウス」とは凝乳のことで、それぞれの国でカッチョ(イタリア語)、ケーゼ(ドイツ語)、チーズ(英)など、いわゆるチーズという言葉へと派生していった。一方、「フォルマティクス」という言葉は、型に入ったという意味で、凝乳を樅や樺の木の皮などで作った型枠に流しこんで石をのせて脱水したことに由来している。「フォルマティクス」は後にフロマージュ(フランス語)、フォルマッジォ(イタリア語)に派生していった。
「フォルマティクス」の元になったラテン語のforma(フォルマ)は、英語のform(フォーム)の語源で、いわゆる型(かた)、形づくる、成形するという意味だ。したがって《フロマージュ・ド・テット》の意味するところを正確に記述しようとすると、冒頭の頭のチーズではなく豚の頭の煮凝りというのが正解だ。
約20センチ長さのテリーヌ型分です。豚耳1枚、豚足1本を水から茹で一度煮こぼす。よく洗い、再び、香味野菜(タマネギ、セロリ、ニンジンなど)、ベイリーフ、タイム、ニンニクと一緒に鍋に入れ、水(ブイヨンがあれば尚可)、白ワイン(200CC)、塩、ブラックペパーと一緒に弱火で煮る。豚耳は端を切ってみて、好みの柔らかさに茹で上がったら一旦取り出す。30分から1時間程度か。豚足は2~3時間かけて、骨が外れるぐらいの柔らかさまで茹でる。冷めた豚足を手で分解して骨を取り除き、適宜カットする。豚耳も細長く1/2ぐらいにカットする。ゆで汁から野菜を取り除き、豚足と豚耳を戻し、テリーヌ型の容量ぐらいまで煮詰める。テリーヌ型に大きめにラップを敷いて、豚足、豚耳、コルニションを切った時に層になるように重ね、ゆで汁も加える。はみ出たラップで覆い、重しを載せて冷蔵庫で固まるまで冷やす。2~3時間か。
ソースを作る。ボウルに塩を入れ、赤ワインヴィネガー、シェリーヴィネガーを加え、フレンチマスタード、オリーブオイルを加え撹拌し乳化させる。ケイパー、コルニション、パセリ、エシャレット(なければタマネギ)のみじん切りを加え、フレンチマスタード、塩、ブラックペパーで味を整える。
固まったフロマージュ・ド・テットを切り出して、ソースを添え、ブラックペパーをかける。
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チキテオではお米を食べる時、その大半は玄米を食べているのですが、ふっくらと炊飯されていながら、お米が立っているような、そんな玄米がないものか思っていたところ、ワイン食堂「メルカド」@山形市のオーナーシェフ斎藤正弘さんの記事「食彩やまがた12か月」で「さわのはな」という品種のことを知って、さっそく紹介していただき、試してみました。
試してみたのは、山形県新庄市の高橋広一さんが作っている「さわのはな」の玄米です。1970年代ぐらいまでは山形県では割と栽培されていたそうですが、収量効率の高い品種に押され、今では数えるほどの生産者しかいなくなった幻の米なのだそうです。高橋家はお父さんの代から、自家採種、直売で「さわのはな」を作り続けている農家です。
まずは普通に炊いて玄米ご飯で。
一口目からその違いがわかります。ふっくらと炊きあがっていながら、ご飯一粒一粒がきちんと立っており、弾力に富むややむっちろした食感とプチプチとしたはじけるような歯ごたえがあります。芯まで柔らかく炊くとご飯がくっついてべちゃっとしてしまう、逆に食感を残そうとするとボソッとして固くて皮が気になるという、玄米にありがちな欠点がまったくありません。香りはというと、ぬか臭いにおいもなく、玄米ならではの、ほのかな香ばしい香りが楽しめます。冷凍した後、数日後に電子レンジで解凍して食べてみましたが、その個性と美味しさはかわりませんでした。
次はチーズとくるみのシンプルなリゾットで試してみました。
「さわのはな」特有の、弾力があり、一粒一粒がしっかりと際立っているという個性がリゾットにはぴったりです。「さわのはな」の玄米の場合は、ジャポニカの白米でリゾットを作る場合のように、アルデンテに炊き上げるために、水加減、火加減、時間などを微妙に調整をしなくても、普通に炊くだけで十分な食感が得られるので、逆に大変楽です。白米同様の食味と食べやすさでありながら、バターやチーズやオイルに負けない玄米ならではの存在感という点も「さわのはな」の玄米がリゾットに適してい所以です。きっとカレーやストロガノフに添えるのにもふさわしいでしょう。
ディテールがどうしても気になって仕方がないというチキテオのやっかいな心性から、「さわのはな」の際立った個性と優れた食味の理由はどこにあるのかが知りたくなり、素人探偵よろしく調べてみました。素人ゆえの認識違いなどがあったらご容赦&ご指摘ください。
玄米をよく観察してみると「さわのはな」は、ほかの玄米に比べ、少し粒がやや小さい割には胚芽部分がやや大きいように思えます。
ネットで調べてみると、やはり胚芽が大きいのは「さわのはな」の大きな特徴で、それは栄養価が高く、生命力が強いことを意味するのだそうです。発芽率もほかの品種に比べると高いとのこと。「さわのはな」独特のプチプチした感触は、この胚芽が大きいという個性に由来しています。
害虫に強く農薬や化学肥料が要らないこと、また精米した後も梅雨や夏の暑さで劣化しにくいといわれる「さわのはな」の特徴も、その強い生命力から来ていると思われます。
一方で「さわのはな」のそうした個性は、栽培中に倒伏(実った稲が倒れること)しやすく、倒れた籾が水につからないようにしたり、倒れた稲を刈入れるのに手間がかかる、なによりも白米にした時の歩留まりが悪いなど、量産や効率にはなじまない性格の品種であるとも言えます。この辺が農業にも効率が求められる時代のなかで「さわのはな」の作付けが減り、徐々に忘れられていった理由です。
「さわのはな」は、うるち米の中でもこしひかりと同様に低アミロースであり、炊飯した際の粘性が高く、日本人が美味しいご飯と感じる成分構成なのでそうです。玄米ながらもっちりとした弾力ある感じは、ここに由来しているのでしょう。
以下では、上記の玄米ご飯と玄米リゾットのつくり方を。
チキテオでは普通、以下のようなやり方で玄米を炊いています。玄米を軽く水で洗って、ボウルに入れ水に浸す。夏場は半日から一日程度、冬場は二日程度。途中で一回水を交換する。玄米の状態は、少し発芽が始まっているような状態です。流水で軽く洗って、浸水した玄米と同量の水で炊飯器の玄米モードで炊く。炊飯時間は2時間ぐらいか。
玄米リゾットのつくり方です。玄米を軽く洗い、半日ほど水に浸す。フライパンにバターを溶かして、水を切った玄米(1/2)を加え、バターが回るように炒める。玄米の量の2~2.5倍程度の量の水を加え、蓋をして弱火で炊く。水分がなくなってほど良い食感に炊き上がったら、砕いたくるみ、ブルーチーズ、牛乳(50cc)、生クリーム(大2)を加え、塩・ブラックペパーで味を整え、皿に移し、摺り下ろしたパルミジャーノ・レッジャーノ、オリーブオイル、ブラックペパーをかける。
最後に高橋広一さんのサイト「米香房Gratia*s」およびオンラインショップはこちらから。
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