さて、それではPART1でノミネートされた4種類のイタリア産トマト缶の比較結果を発表することにしよう。
■ カゴメ 完熟ホールトマト
お馴染み日本を代表するトマト関連企業カゴメ株式会社が輸入。果実・ジュースともやや朱色に近い赤。ジュースは比較的ゆるくサラサラしている感じ。そのまま口に含むと、爽やかな酸味があるフルーティーな味。トマトソースにしてパスタとして食した感想は、フレッシュでややキリッとした酸味が特徴の味わい。どちらかというと甘みは少ない。
■ スピガドーロ ホールトマト(SPIGADORO)
サントリー系のイタリア食材輸入大手のモンテ物産株式会が輸入。全体的に鈍い赤色。ジュースはなかでは一番ドロっとしており、口に含んでみるとトマトピューレに近い濃い感じの味。トマトソースにしてパスタとして食した感想は、酸味が強くかつ煮詰まった感じのやや癖のある味わい。フレッシュな感じはあまりしない。
■ ソル・レオーネ ホールトマト(SOLLEONE)
イタリア食材輸入大手の日欧商事株式会社が輸入。なかでは一番真っ赤という感じの色。ジュースは比較的ドロっとしており、口に含むと酸味がやや強い果実味が感じられる。トマトソースにしてパスタとして食した感想は、酸味と甘みのバランスが取れマイルドなコクが感じられる味。一方、やや個性に欠ける味ともいえる。
■ アフェルトラ(AFELTRA)
ナポリのパスタなどの食材メーカー「アフェルトラ」社製。イータリー・ジャパン Eataly Japan株式会社が輸入。フレッシュな赤色。ジュースはサラサラしており、口に含むと旬に絞られた新鮮なトマトジュースのような味わい。トマトソースにしてパスタとして食した感想は、フレッシュな酸味と自然の甘みのバランスが取れた爽やかな味わい。酸味のとげとげしさや熟成による癖などはまったく感じられない。それでいて果実を煮込んだコクや深みもあり、食べ飽きない味。
というわけで、「第1回 ホールトマト缶比較大会」の結果は、AFELTR社製が明らかに群を抜いている水準という結果だった。他の3種はそれぞれ個性が異なり、酸味や甘みの度合いや熟性感の有無で好みの違いは出そうだが、水準としてはあまり差が無いレベルだった。
よくみると、AFELTRA社製のみがPOMODORO SAN MARZANO dell’Agro Sarnese Nocerinoという表示があることに気付く。他は「イタリア産トマト」だったり「サンマルツァーノタイプ」と表記されている。
また、AFELTRA社製にはDOPという表示もある。DOPとはDENOMINAZIONE DI ORIJINE PROTETTA の略であり、日本語では「保護指定原産地表示」と訳されるもので、この辺のことはイタリア貿易振興会のサイトが詳しく、調べてみると、DOP表示があるもののみが、ナポリのサンマルツァーノで栽培・加工されている正真正銘サンマルツァーノと名乗れるトマトであるとのこと。
表示の仕方だけの事をいうと、同じ種を他のエリアで栽培したらどうなのかという疑問が湧いてこないでもないが、とにかくそういうことになっているらしく、結果的には、DOP表示のあるAFELTR社製が他と一線を画した味だったということは、やっぱりサンマルツァーノ種を名乗れるトマトが美味しいことは間違いなさそうだ。
イタリアにおいてもDOP表示が可能なサンマルツァーノ種を名乗れるトマトは限られているらしく、その分値段も張るということなのだろう。
とはいえ、他と一線を画したフレッシュな味わいを持つサンマルツァーノ種トマトとはいえ1缶370円の価値はありやなしや?という問題は残る。
この難問への解答は今のところ、通常の煮込みなどにはバランスの良いSOLEONEかたまに酸味を求めたいときはカゴメ、そしてトマトソースそのものの味を活かした使い方をしたいとき(シンプルなトマトソースパスタやガスパチョやトマトソースを添えて食する素材を活かしたグリル料理など)にはAFELTRAを使うということ、に落ち着きそうだ。
サンマルツアーノの缶詰は、以前から業務用として2550gサイズのものがカゴメから販売されており、決して入手できない訳ではなかったが、たとえば、週末にはキッチンに立ってイタリアンに腕を振ると思い立った時に、3~4人用には最適な単位でかつ手軽に入手できるようになったことは大きく、その意味で、このイタリア食材専門のスーパーは重宝な存在である。
また、チーズや生ハムなどの加工製品や各種粉類などの品揃えも特筆すべきものであり、なかでも、種類は少ないながら手作りパンはお勧め。いまや数多いフレンチ系のブランジュリのパンとは一味違った、天然酵母とイタリア産小麦を使った、ルスティックという名の通りの小麦の風味と存在感が実感できる素朴な味わいは、イタリアンを楽しむ際の食卓の隠れたる主役になる一品と評価でき、トマト缶と同様、我が家の定番となりつつある。
ただし、この食材スーパーの品揃え全般に関する印象はといえば、総じて価格水準が高いというのが一番の印象。たとえば、年間200本以上抜栓する身にとって1本2,000円台以上が大半を占めるワインの品揃えは日常使いの選択枝には到底入らないものであり、また、オリーブオイルに関しても、一人あたり年間約5kgは消費する身(ちなみに、イタリアのオリーブオイルの年間消費量は一人あたり12kg。世界一は意外にもギリシアでなんと一人あたり24kg!)にとってオリーブオイルこそはお買い得な缶買いが不可欠だが、容量が少なく単価の高いボトル製品しかないこの店の品揃えは、これまでの食品スーパーとあまり代わり映えしない使い勝手という印象だ。
さすが代官山と納得しながらも、最近の円高レートでの決済商品が並ぶ頃には、もう少しこなれた価格になっているのだろうかなどと、少しは期待したくもなるような価格水準であることは確かである。
店内席やテラス席での気軽な食事を楽しんでいる客数に比べ、食材を購入している客はいつ行っても数えるばかりであるのが、寂しくもあり、あるいは、むべなりしこととも思え、この代官山の店を後にする時にはいつもちょっと複雑な気分になってしまうのは、きっと、たまにトマト缶とパンとチーズぐらいしか購わない当方の懐具合のせいなのであろう。
最後に再び、この個性的なイタリア食材専門のスーパーはイータリー EATALYという店です。
Buon Appetito !
copyright(c) 2008 tokyo culture addiction all rights reserved. 無断転載禁止。