メニューに載っているとどうしても気になって思わず注文してしまう一品というものがないでしょうか。 ビストロにおけるリエットがその一つです。
饗宴のスターターとして取り急ぎ時間を置かずに供されるもの、最初の一杯のお供としてナイフやフォークを動かさずにいきなりパクッといけるもの、それでいて出来合いのものではなくちゃんと仕事がしてあるもの、テーブルに運ばれてきたバゲットやカンパーニュなどと共に楽しめるもの、シンプルでありながら作り手のキャラクターがはっきり現れるもの、最初の一品とはいえビストロでの食事にふさわしい存在感やコクを伴なったものなどなど、何故リエットなのかという理由はいろいろありますが、まあ、要は、この手のちょいとつまめるもののにどうしても惹かれてしまうということなのですナ。
というわけで今回はポーク・リエット作りの話題です。
リエットのレシピもいろいろありますが、豚の脂のおいしさがきちんと感じられるもの、野菜の甘さが抑えられているもの、スムーズな食感の中にも繊維質が残っており肉を食べていると実感できるもの、などいってみれば、いかにもリエットらしいリエットが好みであります。
こうしたリエットらしいリエットの作り方といえば、先ずは豚バラのブロックを4~5センチ角に切る。鍋にラード(好みだが豚バラの場合は肉の量の1/4~1/5くらい)、厚めにスライスした玉ネギ、ベイリーフ、ローズマリー、白ワインを入れ、火にかける。ラードが溶けたら、切った豚バラを入れ、低温で3~4時間煮続ける。白ワインは肉がかくれるひたひた程度。途中で水分がなくなるようなら、適宜水や白ワインを加える。肉がごく柔らかく崩れかけるぐらいの状態になったら鍋を火から下ろし、肉だけをボウルに取り出し、鍋に残っている液体上のラードから玉ネギやハーブ類を取り除いておく。フォークを使ってボウルの肉を粗く潰ぶし、塩・粗引きブラックペッパーで味付け。潰した肉をラムカンやガラス製のポットなどにいくつかに小分けにして詰める。最後に少し上から押さえて、鍋のラードを注ぎ、自然に冷えて表面のラードが固まったら完成。
ニンジンなどの他の野菜を入れたりしないし、いっしょに煮た玉ネギなどとあわせて潰したりもしない。フードプロセッサーを使ったりもしないし、白ワインだけで煮込むこともしない。
こんな、簡単明瞭質実剛健なリエットには、厚切りのパンドカンパーニュを表面が少し焦げるくらいに炙ったものやバゲットでも少しライ麦が混ざったコクのある味わいのものを手割にしたものなどと共に食すると実に良く合いそうです。そうそう、食べる前に粗引きのブラックペッパーをガリガリとかけるのをお忘れなく!
copyrights (c) 2010 tokyo culture addiction all rights reserved. 無断転載禁止。