父は笠智衆、娘は岩下志摩という配役。いつものようにほのぼのとしたセリフ回しと妙にうきうきさせる音楽とともに極めて冷徹な現実認識が披露される。ヒョウタンこと恩師の東野英治郎のとうの立った娘杉村春子が涙を流すシーンは人生の取り返しのなさを感じさせて残酷だし、一方、娘岩下志摩が不本意な結婚に甘んじるというのも別の意味で残酷だ。ままならぬ人生、さらに父笠智衆には老いの孤独も迫り来る。平山家の誰もいない廊下や娘の部屋の空ショットがそれを象徴しているようだ。家族が不在の家が陰の主人公のような映画でもある。小津安二郎は翌年60歳で死去。本作が遺作となった。
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