失われつつある東京の坂と路地を訪ね歩く「東京坂路地散人」シリーズ。
vol.11で堀切からスタートした今回の濹東徘徊、満を持しての夕暮れからの部は地元出身のY氏の案内で当地の名酒場を巡るツアー。
以下は「バブルをめぐって」に登場したU氏も加わった3人による題して「第1回酎ハイ酒場はしご酒ツアー」の巻。
スタートの1軒目は、押上のもつ焼きの「松竹」。RC打放しの壁にゆれるもつ焼きと記された赤提灯が期待感を高めてくれます。
暖簾をくぐってすぐのカウンターに陣取り、開け放たれた扉越しにまだまだ暑い夏の夕暮れの気配などを感じながらの最初の一杯、なんともいいものです。店内にも週末の夕暮れの1杯を前にしたほっとしたような和んだ空気が漂っています。
新鮮なレバ刺しから始まり定番の煮込み、そして各種もつ焼き。もつ焼きは歯ごたえのある食感のテッポウ(直腸)やコリコリとしたコブクロが最高でした。店内に掲げられたもつをめぐる口上書も飽きさせません。
次なる2件目は曳舟川通りの「岩金酒場」。いい雰囲気ですネー。入る前からワクワク度100%の店構え。
この手描きの品書きのラインナップを見て下さい。ハムカツ、あじフライ、さば塩焼き、ベーコンエッグなど、こういう定食屋っぽい一品、弱いんですよネー。ついついたのんでしまいます。そうそう例のポテトサラダもお忘れなく!
とはいえなんといっても感動したのがもんじゃ焼きのグラタンのような逸品(正式名称は失念)。初めてながらなつかしいという感じのソース味の和製グラタン、酎ハイに実にマッチする一皿でした。
定番のこはだ酢やげそわた炒めなども期待を裏切らない旨さ。隣の人の食べていたカレーライスも食べてみたいヨーと思いながら、後ろ髪を引かれる思いで次なるお店へ。
曳舟川通りと水戸街道の間の旧寺島町の路地を千鳥足で闊歩するY氏とU氏。
いよいよ3軒目は水戸街道をちょっと入った路地裏に佇む「三河屋」。
シンプルで質素な内装、こじんまりとした木のカウンター席、デコラのテーブル2卓、さほど多くない品書き、無造作に点けられているテレビなど、何気ない普通の感じがなんとも心地の良いお店です。酎ハイ250円という値段にも感動します。
それだけではありません、コクがありながらしつこ過ぎない味わいで絶妙な食感を残して仕上げられた見事な牛煮込みが350円、サクサクぷりぷりの揚げたての小エビ天が山盛りで400円と全てが旨くてかつ驚くほどの値段で楽しめるのです。
小エビ天に感動し手が止まらないY氏とU氏。
「三河屋」さんをはじめ当地で酎ハイといえば、独特の淡い黄緑色をしたちょっとビターな感じのものがジョッキで出てきます。このいわゆる「下町酎ハイ」、調べてみると、その中身は甲種焼酎に「天羽の梅」というエキスを混合したものを強めの炭酸で割って作られているとのこと。全ての液体とジョッキを十分に冷やして氷をいれないで作るのが正統派。さらに焼酎や炭酸にもお店ならではのこだわりがあるようです。
「三河屋」さんの酎ハイも写真のように実にオーソドックスな「下町酎ハイ」。これがまたモツ焼きや煮込みなどのこってり系に良くマッチするとともに2杯目、3杯目でも不思議と飲み飽きない味わいを持っているのです。
4軒目は先ほどvol.11で通ったばかりのいろは通りと鐘ヶ淵通りの交差する付近にある「和楽」。「奥様公認」というのが可笑しい。
ここは、「下町酎ハイ」を始めた元祖にあたるお店とのこと。上品そうでいながらどこか艶っぽい雰囲気のオヤジさんとその直筆による達筆な品書きが印象的でした。
さすがに呑み疲れた様子ながらもさらなるお店を探して鐘ヶ淵縁通りを北上する3人。
そして最後に行き着いたのが鐘ヶ淵駅前の「紅中」(ちゅん)。vol.11で通った際に「手作り餃子」の表示が気になっていたお店です。
とはいえさほど期待もせずにとりあえずビールのつまみにとたのんだ餃子が感激の逸品。2回も追加注文して計6人前を平らげました。
ちなみに写真の餃子は3個しか写っていませんが、その理由は出てくるすぐそばからY氏とU氏がすぐさま口に入れてしまったから。本当は1人前計5個。4軒をはしごした後でもすぐさま手が伸びる、それほどここ「紅中」の餃子はすばらしかったです。
そして帰還は鐘ヶ淵駅から半蔵門線直通でこの上なく便利になった東武東上線にてということで、あとに残るのは(たぶん)明日の二日酔いだけということに相なり、かくして「第1回酎ハイ酒場はしご酒ツアー」も満足感動のうちに無事終了を迎え、めでたしめでたしという訳でした。
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