パリの旨くて安い飯どころをご紹介する“パリ ノ メシ”シリーズ。
セーヌ川河岸からサン・ジェルマン・ブルバールを交差し、リュ・ドゥ・セーブルへといたるリュ・ドュ・バック Rue du Bac は、インテリア・ショップをはじめとした気の利いた小さなショップが軒を連ねる通りで、そぞろ歩きをしながら “アートとしてのファサード” 、これこそは密かにパリ名物のひとつではと思っているものなのですが、の妙味を楽しむにはもってこいの通りです。
そのリュ・ドュ・バックと直行するバヴィロンヌ通りを少し西に入ったあたりにあるのが、この辺のやや気取った界隈に似つかわしくない実に食堂的佇まいのビストロ「オー・バビロンヌ」 Au Babyloneです。
インテリア・ショップなどを冷やかしながら、昼のみ営業のこの人気店に辿りついた時は、既にもう閉店間際のギリギリセーフの最後の客としてでした。今日はステーキしかないが良いか?ということでしたが無論OKということで、考えてみればこちらもパリ名物のひとつといわれるステーキ(フランス語だとステック)を今まで食べ損ねていたことに思い至って、なんとも怪我の功名的グッドタイミング!ということになり、さっそくチェックのテーブルクロスも雰囲気抜群の席に陣取ってワインを飲り始めました。
「・・・・メジャム?」とおばさん、なにやら確認したい様子。
「????」と顔を見合わせる我々。
「・・・・キュイッソン、キュイッソン・・・・メジャム、OK?」と再び、いろいろと説明に工夫する様子のおばさん。
「キュイッソン?メジャム?キュイッソンは確か焼くという意味だよな。メジャムとは何か焼いた付合せのことじゃあないの?メジャムねえー。ジャムはフランス語では確かコンフィチュールだよナー。」
「まさかステーキに焼きジャムの付け合せってえことはねえだろう!?ステーキの付け合せはここフランスじゃあ、ポテトと相場が決まっているもんだぜ。」
「じゃあメジャムとはなんかポテトを焼いた付け合せのスペシャリテみたいなものか?まあ、いいや、とにかくお勧めらしいからメジャムでいこう! ウィ マダッム “メジャム” シルヴ・プレ!」
「ウィ ムッシュー」と安心した様子の笑顔のおばさん。
しばらくして運ばれてきたのは、実に正統派のマッシュポテトの付け合せを伴なったグリルパンの焼き色ラインも見事なジャスト・ミディアムに焼かれた期待通りのシンプルなビフテック。
マスタードを効かせながら滋味深い噛み応えのある日本のそれとはまた違った味わいを持った牛肉ときちんと仕事がなされたスムーズなマッシュポテトを肉汁といっしょに堪能していると突然、思い当たったように一同顔を見合わせました。
「ん?・・・・・Medium?ミディアム?・・・・メジャム!」
まだまだ世の中、捨てたものではありません。ありふれた日常を未知なるものとして楽しむ機会はいたるところに存在するようです。
*Au Babylone
13,rue de Babylone 75007
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