パリの旨くて安い飯どころをご紹介する“パリノ メシ”シリーズ。
今回は日本ではほとんど見かけないお店の店先で売る殻付き牡蠣です。
秋から春先までの間、パリのちょっとした街角のカフェやブラッスリーの店先に、さまざまな種類の殻付きの牡蠣をはじめ、ムール貝、蛤、小エビ、雲丹などの海の幸を売るスタンドが設けられます。
店内でFruits de Merと称する砕いた氷に乗せられてサーブされる豪華な海の幸のプレートと格闘したり、様々な大きさと種類の生牡蠣をとっかえひっかえしながら食べ比べるのももちろん楽しい訳ですが、この店先のスタンドではその場で殻を開いてもらった牡蠣や雲丹などをテイクアウトすることも可能ですので、ホテルやアパルトマンの暖かい部屋でよく冷えた白ワインやシャンパーニュと共にいただくというのも気の置けない感じでこれまた格別です。
しかしなんといっても、最も記憶に残っているのは、冬の散歩のついでに通りがかった、やはり殻付き牡蠣を売っているスタンドで、牡蠣売りのおじさんに殻付き牡蠣を2~3個あけても貰って、寒い寒いと言いながら、海水の香りが残るその開きたてをその場でエイヤッと一気に喉に流し込んだ時のことです。冬の海を食しているような、とでもいったら良いのでしょうか、からだ全体に牡蠣のうまさと冷たさがじんわりと染み渡るようなその鮮烈で滋味深い味わいが、20年以上も前のことながら、今でもはっきりと頭と舌と胃に残っています。
それ以来、ヨーロッパの都市を訪れる毎に市場の魚介売り場などをうろついては、その片隅に設けられ人だかりがしているカウンター(正にオイスターバー!)などに陣取って、その時味わった冬の海を丸ごと食するような牡蠣の味わいを密かに追い求めることになってしまいました。
運良くRのつく月にパリを訪れたなら、パリ名物のこの殻付き牡蠣のスタンド売りをぜひ覗いてみて下さい。
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