パリの旨くて安い飯どころをご紹介する“パリ ノ メシ”シリーズ。
今回は日本にありそうでないファラフェル・サンドです。ファラフェルとはひよこ豆の揚げ団子のこと。ファラフェル・サンドはピタパンにファラフェルとキュウリ、玉ねぎ、紫キャベツなどをはさんで、タヒーニソース(胡麻風味のヨーグルトソース)をかけた中東のサンドイッチ。
カトリック文化が生活の根底にあるパリでは、今も大抵、気の効いたお店は日曜日は休みになってしまいますが、ここ4区マレ地区のユダヤ系のお店建ち並ぶリュ・ドゥ・ロジエあたりは別。
最近は11区に程近い3区のリュ・シャロウやリュ・ヴィエイユ・ドュ・タンプルあたりまで、奥マレと称され大いに拡大しつつある本家「裏原」的イメージ(お店の雰囲気はむしろ裏青山や裏恵比寿という感じですが)のマレ地区の小道を探索しながらの昼メシには、ただでさえ狭いリュ・ドゥ・ロジエあたりの観光客で込み合う路上で、例えばG-STAR RAWあたりで決めたそれっぽいお兄ちゃんや年齢超越の渋味見てくれオヤジたちに混じって、立ち食いでファラフェル・サンドをがぶっとやるのが実に正解の気分なのです。
肉団子かと思ってしまうような香ばしく揚がったファラフェル、しゃきしゃき感のある玉ねぎ、歯ごたえのある荒千切りの紫キャベツ、そしていつも追加するトロットした深い味わいのナスのソテー、ヨーグルトの酸味と胡麻の風味のソース、クミンなどのスパイスの隠し味など、それぞれの姿、香り、食感、温度、味覚における個性の対比も新鮮な驚きながら、なんといってもファラフェル・サンドの醍醐味は、食べ初めのサラダ的な個の主張の段階から次第にファラフェル・サンドとしかいいようのない渾然かつ一体となった統合へと次々変化していく個の主張と全体の調和の時系列的メタモルフォーゼの妙味にあります。
中でもお勧めはリュ・ドゥ・ロジエとリュ・ドゥ・オスピタリエール・サン・ジェルヴェの角の、レストランもやっている、日曜などは行列覚悟の「シェ・マリアンヌ」 Chez Marianne。ここのファラフェル・サンドは、なんといっても個の主張と全体の調和が際立っており、どちらかといえばシンプルな食材の組み合わせであるこの料理が内包する奥深さを堪能できます。
*Chez Marianne
2,rue des Hospitalieres Saint Gervais 75004
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