ギャルリー・ドゥ・プロジェのホームベースである代官山の話題をあれこれ綴る”代官山通信”シリーズ。
今回は、旧朝倉家住宅のご紹介です。
朝倉家といえば、ここ代官山では知らない人はいない名前。代官山ヒルサイドテラスのオーナーといえばお分かりになる人も多いでしょう。そのヒルサイドテラス第一期のちょうど後ろ側にある、現在は文化庁が所有する朝倉家の旧本宅が2008年から一般公開されています。
この大正8(1919年)に建てられ、現在は重要要文化財に指定されている、敷地面積5,419㎡、建物(主屋)延床面積573㎡の邸宅には、門から玄関までの長い優雅なアプローチ、お屋敷にふさわしい立派な玄関、目黒川へと傾斜する地形を活かした回遊式庭園、仕事場も兼ねたパブリックな居室機能の作りこみ、雁行しながら庭園の景色を巡るように配置された導線計画など、数々の見どころがあります。
その中でも白眉と呼んでよさそうなのは一番奥の設けられた杉の間と呼ばれている数奇屋作りの空間です。
いかがですか、この息を呑むような眺め。色とりどりの四季の木々が織り成す庭園の眺めがまるでタブローのように開口いっぱいに広がっています。そして、畳の上に落ちる軒や障子を経て入ってくる柔らかな光。
この庭園に抱かれるように造られた数奇屋作りのこじんまりした空間は、かつての当主朝倉虎冶朗氏のプライベートな空間として使われていた部屋だそうです。プレーンな空間ながら実は柱などの木部はすべて板目の杉の木ばかりでそろえるなど、さりげなく凝った意匠にこだわった遊び心を感じさせる空間です。
かつて日本では、庭と建築が一体で、外部空間と内部空間が融合してひとつの住まいができあがっていたのですね。
こんな伝統的な空間の作法が、京都やリゾート地ではなく東京の代官山、しかも駅から5分のところで手軽に体感できるのはすこぶる贅沢なことに思われます。
カフェやレストランでのくつろぎもいいですが、たまにはこんな空間そのものと一人対峙する時間というのもまた素敵な代官山のひと時かもしれません。
*旧朝倉家住宅
東京都渋谷区猿楽町29-20
03-3476-1021
月休 日祝休
copyrights (c) 2012 tokyo culture addiction all rights reserved. 無断転載禁止。
最近のコメント