料理本の楽しさは Tokyo Culture Addiction “料理本は2度美味しい” にも詳しく書きましたが、今回は最近の「愛読書」のご紹介を。
近年は、東京でもパリでもレストランではなくビストロ的お店しか足を運ばなくなってしまったこともあり、コンフィや豚の耳やプティサレ(豚バラの塩漬)料理など、いわゆるビストロ料理を詳しく扱った料理本がないかナーと思っていたところ、発見したのがその名も『決定版ビストロレシピ』(柴田書店)でした。
日本語によるフランス料理の料理本といえば、いわゆるグランドメゾンしか作らないような料理の立派な解説書か、はたまた簡便手軽奥様流にアレンジした料理書しかないなか、この本はなかなか希少だと思います。
それは、例えば、「アンドゥイエット」を作りたい、あるいは作らないまでもどんな調理かを知りたいと思った時に、役に立つ日本語で書かれたほとんど唯一ともいえる料理本であるからであります。
具体的なレシピが恵比寿の「ラ・ピッチョリー・ド・ルル」の池尻シェフだったり、赤坂の「コム・ア・ラ・メゾン」の涌井シェフだったりの、何回かその手になる料理を堪能したお店のシェフのそれであることもそう確信する理由かもしれません。
「豚足と豚耳を煮こごらせたテリーヌ。クセのある風味と濃厚なゼラチン質がもたらす“もったり感”を、酸味のきいたソースで洗い流しながら食べてもらう。耳のカーブを生かしてカットすると、見た目にサイケデリックな凄みが出る。」(フロマージュ・ド・テットへの池尻シェフのコメント)
「ランドの修行先で覚えたレシピ。生ハムのくず肉や骨をだしにして、白いんげん豆、根セロリ、かぶ、じゃがいもなどの白い野菜を崩れるまで煮込む。生ハムの濃厚なエキスがすべてをやわらかく包み込み、まったりとコクのある風味。これとパンとワインがあれば、僕はもう何もいらない。」 (スープ・ド・ガルビュへの涌井シェフのコメント)
どうですか?こうしたコメントを読んでいるだけでも各シェフたちの定番料理への愛着とその裏に秘められた強烈な自信が伝わってくるようではありませんか。
この本に書かれたレシピを基に各シェフのお店を訪ねるもよし、あるいはレシピに書かれた料理を材料調達から忠実にトレースするもよし、はたまた先達に敬意を表しつつ俺様流アレンジで行くもよし、やっぱり料理本はいやはやなんとも楽しいものです。
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