チキテオではお米を食べる時、その大半は玄米を食べているのですが、ふっくらと炊飯されていながら、お米が立っているような、そんな玄米がないものか思っていたところ、ワイン食堂「メルカド」@山形市のオーナーシェフ斎藤正弘さんの記事「食彩やまがた12か月」で「さわのはな」という品種のことを知って、さっそく紹介していただき、試してみました。
試してみたのは、山形県新庄市の高橋広一さんが作っている「さわのはな」の玄米です。1970年代ぐらいまでは山形県では割と栽培されていたそうですが、収量効率の高い品種に押され、今では数えるほどの生産者しかいなくなった幻の米なのだそうです。高橋家はお父さんの代から、自家採種、直売で「さわのはな」を作り続けている農家です。
まずは普通に炊いて玄米ご飯で。
一口目からその違いがわかります。ふっくらと炊きあがっていながら、ご飯一粒一粒がきちんと立っており、弾力に富むややむっちろした食感とプチプチとしたはじけるような歯ごたえがあります。芯まで柔らかく炊くとご飯がくっついてべちゃっとしてしまう、逆に食感を残そうとするとボソッとして固くて皮が気になるという、玄米にありがちな欠点がまったくありません。香りはというと、ぬか臭いにおいもなく、玄米ならではの、ほのかな香ばしい香りが楽しめます。冷凍した後、数日後に電子レンジで解凍して食べてみましたが、その個性と美味しさはかわりませんでした。
次はチーズとくるみのシンプルなリゾットで試してみました。
「さわのはな」特有の、弾力があり、一粒一粒がしっかりと際立っているという個性がリゾットにはぴったりです。「さわのはな」の玄米の場合は、ジャポニカの白米でリゾットを作る場合のように、アルデンテに炊き上げるために、水加減、火加減、時間などを微妙に調整をしなくても、普通に炊くだけで十分な食感が得られるので、逆に大変楽です。白米同様の食味と食べやすさでありながら、バターやチーズやオイルに負けない玄米ならではの存在感という点も「さわのはな」の玄米がリゾットに適してい所以です。きっとカレーやストロガノフに添えるのにもふさわしいでしょう。
ディテールがどうしても気になって仕方がないというチキテオのやっかいな心性から、「さわのはな」の際立った個性と優れた食味の理由はどこにあるのかが知りたくなり、素人探偵よろしく調べてみました。素人ゆえの認識違いなどがあったらご容赦&ご指摘ください。
玄米をよく観察してみると「さわのはな」は、ほかの玄米に比べ、少し粒がやや小さい割には胚芽部分がやや大きいように思えます。
ネットで調べてみると、やはり胚芽が大きいのは「さわのはな」の大きな特徴で、それは栄養価が高く、生命力が強いことを意味するのだそうです。発芽率もほかの品種に比べると高いとのこと。「さわのはな」独特のプチプチした感触は、この胚芽が大きいという個性に由来しています。
害虫に強く農薬や化学肥料が要らないこと、また精米した後も梅雨や夏の暑さで劣化しにくいといわれる「さわのはな」の特徴も、その強い生命力から来ていると思われます。
一方で「さわのはな」のそうした個性は、栽培中に倒伏(実った稲が倒れること)しやすく、倒れた籾が水につからないようにしたり、倒れた稲を刈入れるのに手間がかかる、なによりも白米にした時の歩留まりが悪いなど、量産や効率にはなじまない性格の品種であるとも言えます。この辺が農業にも効率が求められる時代のなかで「さわのはな」の作付けが減り、徐々に忘れられていった理由です。
「さわのはな」は、うるち米の中でもこしひかりと同様に低アミロースであり、炊飯した際の粘性が高く、日本人が美味しいご飯と感じる成分構成なのでそうです。玄米ながらもっちりとした弾力ある感じは、ここに由来しているのでしょう。
以下では、上記の玄米ご飯と玄米リゾットのつくり方を。
チキテオでは普通、以下のようなやり方で玄米を炊いています。玄米を軽く水で洗って、ボウルに入れ水に浸す。夏場は半日から一日程度、冬場は二日程度。途中で一回水を交換する。玄米の状態は、少し発芽が始まっているような状態です。流水で軽く洗って、浸水した玄米と同量の水で炊飯器の玄米モードで炊く。炊飯時間は2時間ぐらいか。
玄米リゾットのつくり方です。玄米を軽く洗い、半日ほど水に浸す。フライパンにバターを溶かして、水を切った玄米(1/2)を加え、バターが回るように炒める。玄米の量の2~2.5倍程度の量の水を加え、蓋をして弱火で炊く。水分がなくなってほど良い食感に炊き上がったら、砕いたくるみ、ブルーチーズ、牛乳(50cc)、生クリーム(大2)を加え、塩・ブラックペパーで味を整え、皿に移し、摺り下ろしたパルミジャーノ・レッジャーノ、オリーブオイル、ブラックペパーをかける。
最後に高橋広一さんのサイト「米香房Gratia*s」およびオンラインショップはこちらから。
Bon appetit !
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